2003.1.8
バリを出さないアルミ板の穴あけ法。 (18) 戻る。 トップページに戻る。
皆様いつもご覧いただきましてありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。ところで年末年始は二足の草鞋の片方で大忙しでした、といってもデスクワークですので大したことありません、インターネット環境が有る職場なので、こっそりロボットサイト等を片っ端から覗いておりました。
二足歩行ロボットに沢山の方が挑戦しています。その工作の中で大勢の方が「アルミ板の穴あけ」時に出る「バリ」についてお悩みのようで、掲示板等にも色々書いてありました。いわく「貫通直前からゆっくりおろす」とか。
皆様かなりお困りのご様子、そこで「つくば工房流」をご紹介します。といっても大した技ではありません、「知ったかぶっている」だけですので「つっこみ」ご容赦下さい。
【本題に入る前に能書きを】
「ドリル作業」をする前にポンチであけたいところに「クボミ」を付ける・・・ と「中学校の技術の教科書」に記載があります。これはこれで正しいのですが説明が足りないと思います。なぜクボミを付けるのかという説明が中途半端です。
教科書には「正確な位置に穴をあける為」とか書いてありますが、それだけではありません、実は穴をあけたい位置の中心に「摩擦熱」を発生させる為なのです。ポンチを打たないで穴あけ作業(ハンデイ電気ドリルで)をしようとすると刃先が滑ってなかなか食い込まず、ずれたところに穴をあけ始めてしまった経験はありませんか?。
ドリルのキリサキは2個の刃物がラセン状に組み合わさったような形をしています。この2個の刃物を繋いでいるのが「中心」の部分です。ところでこの部分は研げません、ここを「チゼルポイント」と言います。(発音多少ちがうかも)キリの太さでちがいますが大体5ミリのキリサキで1ミリほどあります。(最近この部分を研いだ物が売られていますが、特殊研磨機がないと出来ません、それっぽくは出来ますが)
【これがバリと関係あるか?】
あります。ドリルで穴をあける場合回転は勿論ですが、かなりの力で押しつけねばなりません、この力はほとんどが摩擦熱を発生させるため(金属の場合)と私は思います。そしてその熱で材質を軟化させてめり込ませるのです。(チゼルポイントの部分)ですから厚い鉄板にいきなり10ミリのドリルキリサキで穴をあけようとすと、最初から最後までかなりの力がいりますが、3ミリ程度の下穴をあけてからだと簡単にあいてしまいます。
アルミ板の場合は鉄より簡単に穴あけ出来ますが、やはりある程度の力は必要です。この押し下げる力を貫通寸前にゼロ近くまで弱めれば「バリ」はかなり押さえることが出来ますが、(バリは切り子になるべき部分が押し下げられて刃先外周部分から逃げてしまったところですから)作業上ゼロにはできません。(作業がなかなか終わらなくなってしまいます)
【バリの逃げ道をふさぐ】
となれば方法は簡単、バリの逃げ道を防げば良いわけです。色々な方法があります。多くの皆様がやっておられる方法の一つが下に捨て板を置く方法です。手軽な方法ですが近接している部分に穴を続けてあけようとすると「切り子」が間に入って隙間が出来てしまい、すぐにバリの出る状態になってしまいます。そこで切り子が隙間に入り込まない方法を3つほどご紹介します。
【方法その1】
ボール盤で「アルミ板」に穴をあける場合の一般的な方法。
適当な丸棒(この写真では直径10ミリの鉄筋)を、これ又適当な板(この写真では厚いベニヤの切れ端)にはめ込みます。そして中心付近にポンチを打ち、穴を深さ5ミリほどあけます。(台の形が変なのは端切れを使ったからです)
中心線さえあっていれば下のバリはほとんど出ませんが、
このやり方だと上の切りカスで表面に傷がつく場合があります。
(バリを出さないためには貫通時、板を浮かせないようにする)
この治具は3ミリ用に作りました。専用になりますのでほかの径にしたい場合は新しく作る必要があります。使い方は簡単で、ただ穴をあけるだけです。「こんなショーモナイ」とお思いでしょうが効果は抜群で、裏側チョッピリバリが出ますが太めのキリ「ひと廻し」で簡単に除去出来ます。(なぜバリがあまり出ないかはバカバカしいので省略します)
ポンチでへこみを付けただけでは「正確な位置への穴あけ」は絶対出来ません、理由は山ほどありますが、その辺のところは面倒くさいので学者先生の(まともな高専とかなら授業でやるはず)解説にお任せして、次ぎに「絶対正確でバリの出ない」治具(と 言うほどでもありませんが)の作り方です。(これも馬鹿みたいですが奥は深いです)
しつこいようですが、卓上ボール盤程度では絶対に「正確な位置への」穴あけなど出来ません、また「垂直」(真っ直ぐ)にもあきません、私は「電子工作用パネルパンチャー」の2ミリの穴を24ミリの深さにあけるのに非常に苦労しました。
【方法その2】
専用の治具を作る。
このような物です。
フラットバー(平鉄)でガイドを作ります。上のガイドは「キリサキ」の振れ止め、下のガイドは「バリ防止」です。この治具の利点は3つあります。 1・・・ポンチを打つ必要が無く、正確な位置決めが出来ます。 2・・・表面の穴の廻りに全く傷がつきません、 3・・・下側にバリが全く出ません、 欠点・・・平らな状態の板しか加工(穴あけ)出来ません。
上の長い2枚が 3*32*300 フラットバーです。下の真四角っぽい5枚の板は左から、
3*32*32 フラットバーです。真ん中の穴は組上がってからあけます
3*32*32 同じく、 左右の穴は2.5ミリでタップが立っていますが両面テープでも良いです
1*32*32 スリットを空ける為のアルミ板です。今回は1ミリにしました
3*32*32 フラットバーです。スリットを維持するためのスペーサーです
3*32*32 同じです。
このように組み立てます。中心の肝心の穴は今回3ミリにしました。これはあけたい穴の寸法に合わせてその都度作ります。私はこの板を皿ビスで止めましたが「両面テープ」で大丈夫だと思います。各部の寸法は適当です。材質も鉄ではなくても良いと思いますが、中心スリットの上下の板は「摩耗」を考えると鉄(それも出来れば鋼鉄)が良いと思いますが、アクリルでも20回程度は持つでしょう。
使い方ですが、加工したい部材の方には十字と丸を書いておき、スリットに差し入れて上の穴からのぞき込み、正確に合わせます。端の方をつかんでずれないように押さえながら「電気ドリル」か「ボール盤」で穴空けします。
電気ドリルですと馬鹿穴になりやすいので10ヶ所目ぐらいからバリが出始めます。ボール盤なら50ヶ所ぐらいまでは持つでしょう、鋼で穴加工出来れば言うこと無しです。
【その3】
「穴あけヤットコ」を使う。
穴あけヤットコとは「市販されていない工具シリーズ」に
作り方を載せていますのでご参照下さい。
このように何種類か作っておくと便利です。
ヤットコの先端近くに開けたい穴径を貫通させただけですが、ヤットコが挟める範囲ならどこでもあけられます。又、【その2】と同じ特徴もありますので何丁か作っておくと重宝すると思います。
このほか色々ありますが、だんだん「汎用」ではなく「専用」になっていきますので、皆様色々我策してくださいませ、ところでもう一つヒントを、・・・ 「ボールベアリング」を使う方法があります。10ミリ以上の穴を正確(100分の1ミリとか)にあけるのに有効です。(ガイドに使います)
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これらの方法は30年以上前からやっていましたが、今回改めて作っていて新製品を発案しました。題してロボット制作工具【アルミ板穿孔機】です。まだアイデアが出たばかりで試作していませんが、ホビーの方必須の工具になる予感がします。早く製造再開したいです。(今日は母の白内障の手術の打ち合わせでした)2003.1.8 記