林メカトロ工作支援室
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【折り曲げゴッコ】 前編
2005.11.8

 皆様今日は、昨日は忘年会の予行演習で1日工作もHPのUPもしませんでした、それにもかかわらず沢山の方からアクセス有り難うございます。そこで支援室にふさわしいネタとして「金属板の折り曲げ」をまたまたやろうと思います。昨日の「お山分校便り」で、「なやつさん」という方からヤゲン曲げ機についての情報、を知りました。私もカタログいっぱい持っていますが、なやつさんの情報は知らない物ばかりでした、なやつさん有り難うございます。

 さて、最近「板金」・「板金工作」という記事を沢山見ます。私の憶えでは板金・・・とは「トタン板で屋根を葺く工事」とか「煙突とかダクトの工事」あるいは「台所の水回りのステンレス工事」というイメージが強いんですが、近頃は「サーボのブラケット作り」の事を皆さん「板金工作」とおっしゃっているようです。(普及すれば正しくなるのかも、板金屋さんも最近あまり見かけないし)

 金属板の折り曲げ法は6種類ぐらい有ります。なやつさん情報の「ヤゲン曲げ機」はごつすぎるので私はどなたでも自作出来る折り曲げ法をやります。あまりに稚拙な方法なので【折り曲げゴッコ】と言わせてもらいます。最初は「折り曲げ治具」ですが、発展させれば「折り曲げ器」そして「折り曲げ機」に昇格させることも可能です。始めはたいして材料もかからないもっとも加工の少ない「打撃法」です。(油圧ジャッキまで使うようになれば本格派になります)

 
 3*30*30アングルを5センチに切った物2個と 3*25平鉄を5センチに切った物1枚をサンドイッチにしてボルトで固定します。(私は時間が惜しいので溶接しています。ゴメン)この5センチというのは適当です。要するに3ミリの溝がある台を作ったわけです。
 
 はじめはこの3ミリ幅だけでいいですが、出来れば色々な幅の物を作っておくと多様な材料に対応出来ます。写真は左から「3ミリの丸棒を2本乗せた物」・「3ミリ幅」・「6ミリ幅」・「9ミリ幅」です。アングルとかですが、ホームセンターの地震対策コーナーに良い物が有りますので探して下さい、アルミアングルとかでも作れます。

 この丸棒2本式は奥が深いです。折り曲げに関する私の「放物線理論」からあみ出した方法で、ヤゲン式の新たな発展ではないかと思っております。(なんて・大したことないけど)放物線に加工するのは難しいですが、丸棒(パイプでも可)なら手に入りやすいし、疑似放物線に見立てています。
 では早速使ってみます。これは厚さ 0.4ミリのトタン板です。縦 10ミリ 横 42ミリです。軸受けの補強のつもりです。(急いでいてちょっと寸法間違えました)
   
 曲げたい部分を溝の真ん中あたりになるように乗せます。大体で良いです。(セルフセンタリンクが働く)そしてヘラ(掃除用具の)か大工道具のノミをケガキ線にピッタリ合わせて金槌で軽く「コンコン」と叩きます。軽く叩いてください、理由は後述します。(2つ理由が有ります)この写真には三次曲げ(逆曲げ)も入っています。

直角はバッチリです。
(ケガキが狂っています)
 3ミリの丸棒2本を並べた物はちょっと隙間に余裕がなさすぎでした、0.5ミリぐらいガタを入れた方が良さそうです。

次は0.5ミリの銅板です。二次曲げをします。
(二次曲げとは四方が立っている曲げ方です。私が勝手に命名)

  
 幅3ミリの台を使っています。この台では5ミリからの逆曲げ(三次折り曲げ)が出来ます。幅30ミリのところを折り曲げています。
 ここでトラブル発生、押し下げるヘラは幅25ミリと60ミリの物しかありません、ところが二次曲げをする幅は50ミリ、どちらのヘラも使えません、そこで平鉄を49ミリに切り、片刃に削りあげて代わりとしました。
 
完成。
 このぐらいの形になると、万力では出来ないことは有りませんが苦しくなります。もっとも銅板ですから幅広ヤットコとかあれば簡単ですけど。
  
 次はトタン板で単純BOX作りです。この辺からもう「折り曲げゴッコ」とは言えなくなります。もう立派な「折り曲げ治具」と言っても良いかと思います。曲げ幅も60ミリと台より長くなっていますので、別の台を追加しています。置き方なんていい加減で大丈夫です。というか「しっかり固定」してはかえってキズとかつきます。曲がるにつれ、ひとりでに台の方が動いてくれます。(こういうことはやってみないと分からない事かも)
 縦30ミリ・横60ミリ・高さ15ミリの完成です。四隅の手当はありませんが、トタン板(厚さ 0.4ミリ)なのでとてもしっかりしています。(折り曲げ角がピッとしていて気持ち良いです)(見た目完全直角)
 明日は1ミリ厚と2ミリ厚のアルミ板をやります。それとこの打撃法の利点・弱点とその対処法及びもっと大きな寸法はできるか?、の考察をします。(暇が有ったらね)

【折り曲げゴッコ】 後編
2005.11.9


厚物に挑戦、これは2ミリのアルミ板です。(幅30ミリ)
 打撃法だと「厚い物」「硬い物」になってくると不利になってきます。強い力で叩かないと曲がらなくなるからです。(そこで「ジャッキ」とか「リンク」とか「弾み車付き」とかになるわけです)厚さ2ミリのアルミ板(ホームセンター等で売っている物)ですと5センチ幅( 50mm)ぐらいが限界でしょうか、それ以上も勿論可能ですが実は「慣性の法則」が頭をもたげてきて実にやりにくくなります。それから「空気抵抗」も出てくるし、ついでに押し下げ刃で材料の痛みが大きくなり、それからそれから「圧縮特性」なんてのも出てきて仕上がり寸法に「サバ」を読む必要まででてきます。

 しかし、簡単な治具でここまで出来るのですから結構遊べるでしょう。
 上が手ハンマー( 2Kgぐらい)、中が一般的に金槌( 350gぐらい)と呼ばれている物、下も同じく金槌(120gぐらい)です。今日は手ハンマーを使います。それから台として金敷か蜂の巣、無ければ重量ブロックか煉瓦を下に敷きます。コンクリートのタタキの上でも良いです。
 
 まずは「下曲げ」、2ミリともなると一度に曲げない方が良いと思います。これはC型に曲げようとしていますので4個所です。手ハンマーで思い切り叩くのではなく「ゴン   ゴン」というような感じで叩きます。跳ね返りますから常にずれないように注意が必要です。最初溝幅9ミリでやって仕上げは6ミリ幅の台でやります。
 慣性の法則により、赤矢印のように「必ず反ります」、これは打撃法では避けられない現象です。回避する方法も有りますが、今回は「ゴッコ」ですので別の機会にします。(本格的になっちまうから)

直角になるように6ミリで最後の仕上げ。

 
常になおしながら。

 
完成です。
(内寸法 10*30*80*30*10ミリ)


今回活躍した9ミリと6ミリ幅の台。
 両脇に補強の立ち上がりを付ければ「反り」もかなり押さえられますが、今回わかりやすいように単純C型としました。2ミリでもこの程度で出来るので1ミリだったらもっと簡単です。小さい物でしたらこの「ゴッコ」でもかなり複雑な曲げが出来ますので是非お試し下さい。

 それから今回は直にやってましたが、PPフイルム(ポリプロピレン)とか2枚あいだに挟みますと、更に曲げやすくキズの付かない作業が出来ます。しかしくれぐれも跳ね返りにご注意下さい。



 
【折り曲げゴッコ】 応用編?
(ちょっと失敗くさいけど)
2005.11.10


ゴッコの限界?。

 
45度の定規を使ってこんな展開をやってみました。

 補強の立ち上がりはそんなに精度が出なくても問題無いので、折り曲げの一部をアングル2本でやります。右のボルトは合わせピンの代わりです。
 
このようにクランプでしっかり固定します。


急いでいたので金槌でひっぱたいたけど、案の定汚くなってしまった。
(ヤスリでごまかし)


左右の立ち上がりOK。

 
 昨日と同じようにひっぱたきます。そして失敗、補強の立ち上がりがしっかりしているのできれいに曲がるかと思ったらとんでもない、一番弱い部分が変な風に曲がってしまいました。右の写真のように少し曲げたら後は手で曲げたほうが良いことが分かりました。
 
 で、こうなった訳です。写真写りは良さそうに見えますが、かなりみっともないです。打撃で仕上げるのはやはり「トタン板」の世界のようです。アルミはやはり「ジワリ」と曲げた方が良さそうです。

 そこで「自動車のジャッキ」を使うなり「レバー」を使うなり研究してみて下さい。





 今回の「打撃法」ですが、これは大昔村の鍛冶屋が出来た頃から知られていた方法と考えられます。鍛冶屋さんが使う「蜂の巣」って見たことありますか?、あの側面の90度になっている部分は完璧「折り曲げ」に使う部分ではないかと思います。市町村の統廃合で村そのものが無くなりつつあります。「しばしも休まず槌うつ響き 飛び散る火の玉走る湯玉 ふいごの風さえ息をもつかず 仕事に精出す村の鍛冶屋・・・」の歌は過去の物に。





 2005.11.11
 雨宿りの軒下掲示板に「現役の鍛冶屋様」から「過去の物にしないでくれ」と書き込みが有りました。いや大変失礼いたしました。 言い訳しますと「歌そのものが過去の・・・」という意味でして、決して鍛冶屋さんそのものが無くなったとは思っておりません、私は鍛冶屋になりたかったのですが、いつの間にか電気におかされ軟弱な軽薄短小に流されております。

オマケ
 オマケと言うより私の勝手な言いぐさです。金属板の折り曲げですが、私は5種類に分けてみました。この分類法は私が勝手に提唱している物ですので一般に通用する物ではありません、ただわかりやすいかなぁなんて思いまして、それに折り曲げ機(器・治具)の性能とか特性が把握しやすいと思います。

一次曲げ
L型・コの字型・C型に単純に曲げる事を「一次曲げ」と表現します。


二次曲げ
四隅が立ち上がった曲げ方です。ホーザンのスリット等が有名です。


三次曲げ
逆方向に曲げる事です。機器により寸法に制約が出ます。
(制約を回避するにはプレスに頼るしかありません)


四次曲げ
菓子箱のように四隅に折り返しが有るような曲げです。
(段差曲げ・・・と言っても良いかな)


五次曲げ
一般に「ハゼ折り」?と呼ばれる折り方です。接続に使います。
「円筒」(煙突?)等も作れます。



 こういう見方をすればわかりやすいかなと思いまして分けてみました。これらが全て出来れば「すばらしい折り曲げ機」と言えると思います。ま、薄板用の材料限定ですけど。(市販の物はなかなか当てはまらない、値段も高いし)