林メカトロ工作支援室
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 これからやります「抵抗アーク溶接」は、溶接部分が 1500度以上になりますので火傷の危険があります。電圧・電流も強いので感電の危険があります。非常に強力な光が発生するので、直接裸眼で見続けると失明の危険があります。溶けた鉄が火玉となってあたりに飛び散りますので火傷の危険及び火災の危険があります。引火物も遠ざけてください、「ヒューム」というガスが発生します。多量に吸い込むと健康上好ましくありません、したがって作業中は勿論前後はまわりに子供は勿論大人の見物人犬猫に至るまで十分ご注意下さい、本人も勿論「火がつかない作業服・皮手」等着装してください。

 なんだか書いているうちにやらない方が良いような気になってきましたが確立されている技術だし、自作派としてはやっぱりやりたい工作法なのでやっぱりやります。ってどっちなんだ。
溶接棒。
 鉄同士を溶接出来ればホビーの工作の世界も広がります。溶接棒は直径 1.6ミリからあります。最近 1.4ミリの溶接棒があると知りましたが私の購入範囲には見あたりません、ところで「家庭用溶接機」では 1.6ミリの溶接棒を使っても「取られてばっかり」でなかなか上手くいきません、これは電源の取り方に問題があります。(後述します)

 抵抗アーク溶接では最初のアーク発生に接触させなければならないんですが、アークが発生した瞬間に適度に離してアークを持続させなければなりません、これが熟練しないと難しいわけです。小さな部品の時なんか溶接棒を離した瞬間部品を吹っ飛ばす事もしばしばです。

 そこで新しい溶接法として昔実験して成功した「溶接棒回転法」を発展させ、家庭用溶接機で確実にアークを発生させ、更に小さな部品でも吹っ飛ばさずに溶接出来る仕掛けを「工作ベース300」を使って実現させたいと思います。
  
 強い光を直接見ないように遮光ガラスがはまった面が必須です。片手面と呼ばれる物と頭にかぶる物と2種類あります。頭にかぶるタイプは両手が使えます。(写真右)
 
 絶対必要というわけではありませんが、強力な投光器があると便利です。私はテレビのアンテナをのせる「馬」(屋根用)に差し込んで使っています。
 溶接棒 1.6ミリ 2.0ミリ 2.6ミリです。もっともっと太い物があります。溶接の作業として「下付け」「縦付け」「天井付け」の3種類があり、それぞれ溶接棒の種類が違います。(兼用もあります)このほか低電流用というのがあり、家庭用溶接機ではこの表記がある物が好ましいです。それから「運棒法」といって溶接棒を動かす方法が本に載っています。更に前準備として「肉抜き法」のような下準備作業もあります。ま、原子力発電所のステンレスパイプの溶接でもないかぎり心配いりません。(たまに新聞賑わすでしょ)

 これからやる工作ベース300を使った抵抗アーク溶接はこういった小難しいのは一切ありませんからご安心下さい、ただし危険作業にはかわりありませんのでご注意下さい。


T【工作ベース300を使った抵抗アーク溶接】@


実際はもっともっと派手な火花が飛んでいます。アーク発生と写真撮りは難しい。
 外(土の上とか)でやった方が良いのですが都合により室内でやるので火花対策をします。トタン板の縁を立ち上げで簡単なトレイをつくってみました。
 工作ベース300に軸受けをセットし、如意棒1本入れて2ミリの溶接棒をチャックに挟み込みます。そうです。今回のやり方をすれば家庭用のひ弱な溶接機でも 2.0ミリの溶接棒が使えるのです。(1.4ミリや 1.6ミリの細い溶接棒でなくともチャンと溶ける)
 如意棒を回転させるには電気ドリルを使います。出来れば速度制御の出来る奴が良いです。力は弱くても大丈夫です。実験の結果ですが、1秒間に4回転ぐらいが良さそうです。(私の感じでは)
 
 今回「溶接ホルダー」(溶接棒を挟む奴)は使いません、そのかわりドリルチャックに溶接棒を取り付けています。回転させるので電極をつながなければなりません、といってベアリングを通してはどう考えてもマズイので集電装置を・・・とか考えたのですが、何十アンペアも流れるし面倒くさいナー。

 そこで0.5ミリの銅板 80*80ミリぐらいに切って丸棒に巻き込むように折り曲げ、端をホルダーで挟むというアンチョコな方法にしてしまいました。(結果オーライ)
 ところでチャックに挟んだ溶接棒ですが、作業前は有効長さ 220ミリほどあります。だんだん短くなっていくわけですが、最初の頃は回転させると先端が安定しません、そこで支持架を作ります。材料の選定に迷ったのですが(ベークライトでやりたかった)結局「木」で作っちゃいました。
 
溶接棒が入る溝を掘り、上方向に逃げないようにツマヨウジで押さえています。

 アークを飛ばしているところを写真に10枚ほど撮ったのですが、全てピンぼけになりました。後で考えたらシャッターボタンを半押しにしてからアークを発生させるべきと気が付きました。私って40年以上溶接とかやっていますが今でもアークが発生すると心臓がドキドキします。(失われたアーク、神秘の世界ナンチテ・違うか?)

 溶接棒が母材にひっついてしまう事を「棒を取られた」と表現します。家庭用溶接機の弱い電流ではこの現象が頻繁におこり、イヤになってしまうわけです。又腕が上がればそれが自慢になる訳ですが、この回転式では全く棒が取られませんのでどなたでも溶接出来ます。しかし危険な事にはかわりありませんので十分ご注意下さい、特に作業中は溶接面(遮光面)を使用するわけですが、その時以外でも「伊達眼鏡」は必須です。いつ何時ホルダーやクリップをショートさせてしまうかも分かりません、これはある意味溶接中より危険です。思いもかけない時・所で火花を飛ばして目になんか入ったら2時間以内に目医者さんに行く必要があります。

 眼球に入った火の玉は時間がたつにつれ奥に進入していき、手術不可能になるそうです。(無理に手術すると視力が落ちるそうです)ディスクサンダーの切削粉より始末が悪いのでご注意下さい、ま、危険を予測し、十分に準備をして、バカな事をしなければどうって事はありません。

 この作業をしたら1時間は現場を離れてはなりません、特に屋内で行ったときは2時間ぐらいは監視した方が良いです。鼻を利かせて臭いを探り、煙にも注意します。これを怠ると悔やみきれない事が起こるかもしれません、(火災)次は何か役にたつ物を作ってみます。



T【工作ベース300を使った抵抗アーク溶接】A(完)


やっとうまく撮れた。


ユニバーサル六角Tレンチを作ります。

 
2個所溶接します。

 
 左の写真白矢印がユニバーサルです。右の写真白矢印のキリサキと同じ角度に丸棒の先端を削ります。(赤矢印)取っ手の部分は黒矢印のように少しさらいます。こうすることにより丸棒同士の直角溶接予定部分がピッタリ合います。(溶接ではこのピッタリというのがかなり重要です)
 丸棒同士?の溶接用治具です。なにアングルの山からホールソーで適当な穴をあけただけです。この穴から裏面からも溶接出来ます。溶接のひずみが出ないようにクランプした状態でさっさと溶接します。
  
こんな溶接のやり方は私も慣れていないので、溶接中の写真は撮れませんでした。

 
溶接棒が取られないので安心、しかし抵抗アーク溶接は汚い。

 ユニバーサル六角Tレンチ完成、なんか日曜大工センターでも売っているような気がしますが、自分で作った物は愛着が持てます。

 こういう事をやるために始めた訳ではないんですが、弱い電流でも溶接棒を取られることなくどなたでも溶接が出来る・・・ということを知ってもらうためやりました。最近溶接やってないのでチョッピリアークを見てしまいましたけど。

 本当の目的はロボットの部品造りを始めたときに改めてUPします。


















































 知ったかぶり。(間違っているかもしれない)

 金属同士を結合する方法としてビスやボルト・ナット、リベットを使う方法以外にハンダ付けやロウ付け、そして溶接があります。溶接も「酸素・アセチレンガス」を使う方法、超音波振動で発熱させて使う方法、金属の持つ抵抗を利用して溶接する「スポット溶接」、それからアーク熱を利用して熔解するアーク溶接、プラズマを発生して熔解する「アルゴン溶接」(これは説明にあまり自信無い)とか・・・私の知らない方法ももっとあると思います。

 ホビー的には家庭用 100V電源で出来る「抵抗アーク溶接」が手軽です。しかし手軽なわりにそれなり難しさがあります。これについてちょっと知ったかぶりをしますと、抵抗アーク溶接で溶接出来るのは「基本的に軟鉄だけ」です。鋼・ステンレス・鋳物も溶接出来ますが、ホビーの方にはまず無理と断言します。当然非鉄金属もダメです。この辺勘違いしていらっしゃる方が大勢いらっしゃるようなのでここで更に断言します。(市販の抵抗アーク溶接機を通常に使った場合ですよ、道はあります。困難な・非常に困難な)

 大体、抵抗アーク溶接機なんて元々建築用に使われるのが一般的ですからホビーの工作用としてはせいぜい自作の工具作り程度しか使えません、(実は家庭用って使用率がものすごく悪い)これは使えるパワーの問題です。家庭用抵抗アーク溶接機なんて「買ったけど物置にしまっている」という方が大勢いらっしゃるんじゃないかな。

 家庭用コンセントから取り出せる電力は普通 100V15A 程度、クーラーとかのT型コンセントからは 100V20A 程度です。(安全の範囲内の場合)これだと 1500W か 2000W です。私の経験では普通にアーク溶接出来る最低は 3500W 以上です。これより低くても溶接出来ますが、少なくとも「命を預ける装置」には使いたくない・・・というか危ない、前にレーシングカー(本物)のロットエンドに鉄筋を溶接すると言うので話を聞いていたら「家庭用溶接機でする」と言っていたから「事故るよ、プロに任せたら?」と言った覚えがある。(じやぁなんで家庭用溶接機として売ってるかと言いますと、それなりに使える、だけど使うのはアンタだし切磋琢磨してくださいね、と言うわけ)

 普通、電柱から供給される電力はまず「積算電力計」を通って家の中に入り、「漏電ブレーカー」に入ります。そしていくつかの「ノーヒューズブレーカー」に入り、各コンセントなり電灯回路等に分配されます。(だから分電盤と言う)

 このノーヒューズブレーカーですが、1個の容量が大抵の家庭では 15Aか 20Aしかないのです。つまりコンセントからプラグで家庭用溶接機に電力を供給していては溶接機本来の性能が引き出せないのです。ならどうしたらよいかと言うと、「漏電ブレーカー」から直に2ミリ2芯のFケーブル等で電源接続しなければならない・・・と言うわけです。(又はキャプタイヤケーブル)

 ところがここで困った問題があります。この配線方法は「電気工事士」の資格がないとダメなんです。(たしか?)そこで電気工事店に頼んで分電盤のとなりに溶接機専用のナイフスイッチなりT型コンセントなりをつけてもらわないとなりません。(でも電力会社に届け出したり結構面倒なんですよね)

 私も家庭用溶接機っていうの1台持っているんですがこれの表示が実に分かりづらい、二次電流 105Aなんて書いてある、で、一次側は 4KVAなんて書いてある、これって 40A(100Vなら)必要と言うわけですよね、コンセントなんかから取れるわけがないです。実際 1.6ミリの溶接棒でショボショボでした。