ボール盤で「スポット溶接」を行う。 ???            戻る。   トップページに戻る。


試しアークを飛ばしているところです。
溶接棒はボール盤で回転させています。(最低速) 


 「スポット溶接」と言いますと皆様はどのようなイメージを持っているでしょうか、私たちはスポット溶接を多用した製品の中で暮らしていますが、これほど身近で見たことのない溶接は無いと思います。テレビ等でたまに自動車製造工場で車体を多くのロボットが火花を飛ばしてモノコックボディを作り上げていく様を一度は見たことがあると思います。あれがスポット溶接です。

 このスポット溶接法は、2枚の金属板を電極で挟んで低電圧・大電流を流し、金属固有の内部抵抗で発熱させ、熔解させて接着させています。どのくらいの電圧・電流かと言いますと、昔図書館で調べた記憶なのでちょっとあやふやですが、1V 5000Aぐらいと覚えています。5Kwですね。

 このぐらいの電力になりますと家庭用の電源ではちょっと無理で、工業用200Vを引き込んでいないと使えません、ですから身近ではあまり見かけない訳です。単相200Vのアーク溶接機(抵抗溶接機・6万円程度)をお持ちの方は改造して作ることが出来ます。(興味のある方はメール下さい)  y_okb@msd.biglobe.ne.jp 

 本題。

 そういうわけで、ホビーとしてはなかなか出来ない溶接法ですが亜流があります。いわゆる「点付け」という方法です。これは先ほどの「内部抵抗で発熱させる」方法ではありませんが、溶接の本にはちゃんと「スポット溶接法」として書いてあります。また「器具」も売っているみたいで20年ぐらい前にオートバイの修理屋さんで見たことがあります。(外国製でした)日曜大工センターで売っている抵抗アーク溶接機をつないで使うタイプでしたが、どうやって使うのかそこの社長も知らないようでした。(くれると言っていたのでもらっとけば良かった)

 さて私のやり方です。抵抗アーク溶接でやりますが、この方法はいかに安定なアークを飛ばし続けるかがカギになります。連続アークならちょっと練習すればそこそこ出来るようになりますが、小さいアングルピース(アングルにボルト等用の穴をあけ、50ミリ以下に切った物)等はかなり手こずります。一辺が10ミリなんていったらまず失敗を繰り返します。(ベテランの方は別です)

 これはアークを持続させようとして「取られる」からです。取られるとは溶接棒の先端が母材に溶着してしまい、緊急事態になることです。始めての方はあわてますよ、火傷の危険もあります。あわてずホルダーから溶接棒を放せば良いのですが、パニックになったら全てを分投げて電源を切りましょう。

 私はこの事態を避けるため「ボール盤で溶接棒を回転させる」という馬鹿馬鹿しい方法をあみだしました。(でも理屈は合ってます) 

 
まずボール盤の台の上に絶縁用の板をクランプで固定し、
適当な金属片にホルダー側をつなぎます。
クランプはボール盤本体と絶縁されています。アースクリップを適当なところに挟みます。


溶接棒を三分の一程度にカットし、チャックに挟みます。


溶接機の電源を入れ、ボール盤を低速で回転させます。
ハンドルで下降させます。接触すると安定したアークが発生します。(これはテストです)


厚み1.0ミリ、10ミリ*10ミリの小物(アングルピース)です。(下は爪楊枝)
下の穴に溶接棒が接触し、溶接を確実にします。(ちょっとしたアイデア)
こんな小さな物、普通は溶接出来ません !! 。

 
動かないようにラジオペンチで押さえています。(別の物にすれば良かった)
1.0ミリの鉄板の適当なところ(この場合いい加減)に溶接しました。


完了です。当然板の裏側はすこし焼けている程度で磨けば溶接の跡はわかりません。
今回は交流アーク溶接機を使用しましたが、
バッテリー溶接機を使うともっときれいに溶接出来ます。



アークを飛ばし終わった溶接棒の先端です。(左1.6ミリ・右2.0ミリ)
 カルデラ湖のようにへこんだすばらしい状態です。(専門の方も絶対納得)
次にアークを発生させる時、安定してスタートします。
 


 これでビスの頭やリベットの頭の無いすっきりした表面を持つ工作が出来ます。やっていませんが、家庭用の溶接機といわれている100V
の弱い溶接機でもこの方法なら使えると思います。とにかく溶接棒が「取られる」ことはありませんから。(溶接棒が回っているから)

 私はこの方法を30年ぐらい前に考案したのですが、実際に試したのは今回が初めてです。理屈道理に結果がでるのはうれしいです。この方法はホビーの工作法としてもう少し研究してみます。
 
 ボール盤とアーク溶接機をお持ちの方は是非おためし下さい、アッとそれから始める前にホール盤の絶縁測ってください、それと遮光面は必須です。感電にもくれぐれもご注意下さい、(ってやる方いらっしゃるかなぁ)ハンディ電気ドリルではなんか火を噴きそうでやめた方がいいかもしれません。(絶縁が弱いような気がします。ホコリとかたまってて、私は実験の前にボール盤の各部のゴミををエアーで吹き飛ばしました)

終わり。

ここまでボール盤を使い倒すとあとは「フライス的」使い方でしょうか、
あんまりやりたくないのですが。


9/2

9/3 ちょっと文章を訂正。




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