林メカトロ工作支援室
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【相対チャック・アタッチメント】


これは単に10ミリのシャフト両端にチャックを固定しただけです。
このお互い同じ丸棒を共有している・・・「芯が出ている」というのを利用します。

完成写真 

このようにチャックにシャフトを取り付けます。
電気ドリルとディスクサンダーだけでフリーハンドで作ります。

 いよいよ林メカトロ工作支援室にもRPGで言うところの「中ボス」の登場です。ドラクエだったら「デスピサロ」ぐらいです(結構強いから味方にすれば心強い?)孫悟空の持つ如意棒のようにメカトロ工作初心者にとって力強い武器になるでしょう。

 ドライバーとかラジオペンチのような工具を別にしますとメカトロ工作に必要なのはまず「ハンダ付けセット」でしょうか、次に「電気ドリル」それから持っている方は少ないかもしれませんが「ディスクサンダー」でしょう、更に思い切って「ボール盤」とか「糸鋸盤・丸鋸盤・バンドソー」と言ったところでしょうか。

 「旋盤」となるとなかなか手が出ません、ヤフオクでも6万ぐらいするし普通は12万(精密小型旋盤)ぐらいします。重いしタタミの部屋なんかでは使うのがためらわれます。「フライス盤」になると持っていらっしゃる方はぐっと少なくなると思います。極めつけは「CNCマシン」です。最近一足飛びにこれを購入する方が増えてます。私も欲しいのですが財政がひっぱくしており、まだです(これはラスボス)。

 鉄道模型で蒸気で走らせる奴とかエンジン(内燃機関)を作るには旋盤は必須です。しかし私はそんな凄い工作ではなく「3ミリの丸棒の真ん中に 1.9ミリと 2.0ミリの段違い穴をあけ、マブチモーターのシャフトにたたき込みたい」とか「アクリル板で輪ゴム用のプーリーを作りたい」といったほとんど小学生レベルの工作がしたいのです。

 それもトランクに入れてどこにでも持ち運べてタタミの部屋でも作業出来て「女房や看護婦さんに怒鳴られない」ような奴を作りたいと思います。名付けて【相対チャック・アタッチメント】、そこんとこよろしく。
 ドリルのチャックですが、最大くわえ込み寸法が 6.5ミリ 10.0ミリ 13.0ミリと3種類あります。最小くわえ込み寸法も別々です。今までは赤矢印のように「テーパーシャンク」になっているのが普通でしたのでプロでもないかぎり「加工して使おう」等ということは手軽には出来ませんでした。

 
 ところが最近の「電池ドライバードリル」等の発達で、チャックがアタッチメントとして簡単に着脱出来る物が安く手に入るようになりました。写真左はなんと一個980円でした、右は「キーレスチャック」です。こちらはちょっと高いです。キーレスの方が使いやすいのですが、なんか「ダーズベーダー」みたいなので、左のハンドル付きを2個買ってきました(本当は安かったので)。

 黒矢印のところは六角形のシャフトになっています。対辺距離は 6.35ミリぐらいです。ぐらいというのはちょっとバラツキがあるみたいで、10個ほど測定しましたがプラスマイナス 0.05ミリぐらい差があります。早い話私が見たのは出来が悪い?(公称は 6.35ミリらしい)。

 この2つのチャックをトイメンにして片方は固定、もう一方は回転させて「旋盤の機能のほんの一部」を実現させようというわけです。それも電気ドリルとサンダーだけで加工しようというわけです。

 回転させる方のチャックの主軸を支えるベアリングです。「ピローブロック」と言いまして「自動調芯軸受け?」とも呼ばれています(グリグリ動く)昔、鉄工所の天井近くで回っていた平ベルトプーリーの軸受けは「メタル軸受け」といって、常に潤滑油を供給しなければならない物でした、いやそれよりも「芯」を出すのが難しくて「シャフト交換」はかなり手こずりました。軸受けが2個所の時はたいして問題ないのですが、3個所以上で受けるっていうのは調整が大変なのです。その点このピローブロックはものすごく楽です(昔、巨大タンカーのスクリューシャフトの取り付けドキュメント見ましたが、なんか最後は「感」みたいな事を言っていたような?、春夏秋冬も関係するらしい、ま、私の工作にはそれはない)。
今回の工作で最大の難問。
 チャックをシャフト(丸棒)に固定する方法は色々あります。探せばジョイントとかありそうですが探している暇はありません、旋盤使えばあっという間に加工出来ますが、旋盤持っているならこんな工作そのものがやる必要ありません(ニワトリとタマゴだぁ)。

 溶接環境があれば良いのですが、あったとしてもシャフトの溶接は経験が浅い方にはちょっと無理っぽいです。そこで「電気ドリル一丁でどなたがやっても成功するだろう・・・」というやり方の一例を実践します。


 今までの工作とちがって「これを作るにはまずあれを作る」、「あれを作るにはそれを作る」、「それを作るにはこんなのを作る」、とかやります(屑鉄を拾ってくる・・・まではいきませんのでご安心を)

 時々わかんなくなっちゃうので、ここで目的の再確認をします。
 回転系の工作をしたいのです。具体的にいうと「丸棒のセンターに穴をあけたい」それから「簡単な円周切削がしたい」ということです。更に「コタツの上でやりたい」「使わないときはトランクにしまいたい」「出来るだけ小さく軽くしたい」最後に「出来るだけ安く簡単に」というのが付きます(それから出来れば精密な工作作業、ちょっと欲張りか?)。

 実は簡単なバイト送りもチラホラ浮かんでいます。ボール盤の部品などを使った旋盤作りの記事をあちこちで見かけますが私の場合は本物志向(機械作り)ではなくロボットの部品作りです(企画七課の内海課長のように「手段の為には目的を選ばない」というのをやってみたいけど私には無理だ)




 10ミリのシャフトの両端を鉛筆削りにしました。これは部品ではなく「調整ゲージ」です。まずこれを作ります。
 軽くするためにアルミ材で作りたいのですが、失敗すると経費が痛いので鉄材でやります。今回の工作が成功したらアルミ材で作り直ししようと思います。

 3*30*30アングル L=115*2 6*25平鉄L=60*2 16ミリキャップスクリューボルト 6本他平ワッシャとナットです。
 
下に突き出ている部分を工作ベース300に挟みます。
(又は2枚のフラットバーに挟んで万力で固定してください)。

 ピローブロックに長さ200ミリ(適当)を入れて左右にずれないように仮止めします。ここで重要なポイント、ピローブロックに付いてくる「ホーローセット」(イモネジ・沈みネジ)は先端がまるでカルデラ湖みたいになっていて鋭く硬いです。Lレンチで軽く締めただけでも先端がシャフトに食い込み傷つけます。するとゆるめてもキズがひっかかってシャフトが動かなくなります。これは非常に頭にきます。私は仮止めの時は真鍮ビスを使っています(ま、自分でやってて何回頭にきたか、ヤスリで丸めても良いんですが)。
 
 それでですね、シャフトの片側に電気ドリルをくっつけて(くわえただけで固定しなくても大丈夫です。しかし自己責任でお願いします)回転させ、ディスクサンダーで反対側を鉛筆削りします。終わったら反対側に付け替えて同じく鉛筆削りします。

たいして注意しなくてもチャンと芯が出ます。
 この両端を尖らせた丸棒を何に使うかと言いますとピローブロックを正規の位置に固定するのに使います。先ほど組み立てたのはこの棒の加工をするためだけの仮組です。要するに今回の工作「旋盤モドキ」の全体の芯出しをするわけです。


 前半の調整です。黄色矢印がピローブロックを止めているボルトですが、穴はわざと7ミリであけています(ボルトは6ミリ)ピローブロックを正規の位置に正確に固定しなければなりません、そこで昨日鉛筆削りした10ミリのシャフトを差し入れます。

            
 ピローブロックを乗っけているアングルは6ミリのフラットバーで結合してあり、それを更に2枚のフラットバーで支えています。その2枚のフラットバーの隙間に「3ミリのフラットバー2枚を鉛筆削り」の先端付近に左右とも挟み込みます。そして各先端を3ミリのフラットバーの重ね合わせ面に来るようにピローブロックを微調整します。
 ボルトはいっぺんに締めないで少しずつ締めていきます。@BAC@BACとか@ABC@ABCとか順番にピローブロックがずれないように締めます。最後は思いっきり締めます。
 これでやっと主軸の軸受けが完成しました。この調整により主軸は取り付け台に平行になり、更に土台の2枚のフラットバーの相対するド真ん中にセットされました。次からが面白いのです。工具?が工具?(機械が機械かな?)を作る様をお見せします。



 次に固定チャック支持架を作ります。フラットバーとアングルの組み合わせです。寸法はチャックのシャフトから取り付けていく「適当方式」です。こんなの設計するまでもありません。
 
こんな感じです。まだ仮止めです。

 
いったんはずして丸棒をチャックに取り付けます。

 
 そして主軸受けに差し込み、全体を2枚のフラットバーに挟み込みます。写真は工作ベース300にのせていますが、万力(2台必要)でもかまいません。

 この時、固定チャックの位置決めをします。ポイントは「丸棒を共有している」ということです。あちこちのボルトを少しずつ締めていきます。最後にだめ押しでクランプも使った方が良いです。穴あけにはかなりの力がかかりますから(全体重をかけることもあるでしょ)。
 
 シャフトを抜き取り、かわりに「センタードリル」をくわえ込みます。最初のあなあけは必ずセンタードリルでなくてはなりません、最初の穴が普通のドリルだと絶対にセンター(真ん中)にはあきません、その後、加工する丸棒を入れます。

センタードリルに油を付け、丸棒の反対側に電気ドリルを取り付けてグイングイン穴あけします。

 

 丸棒のセンターに案内穴があきました。この後、3ミリぐらいであけてから目的の穴(チャックの心棒の穴)と作業をすすめていきます。


 
 センタードリルをはずして 3.0ミリのキリサキに交換します。ところでここで失敗、片側に電気ドリルを取り付け、油を付けてイザっと回し始めたらいきなり固定チャックが位置ずれし、「バキッ」とキリサキが3つに折れてしまいました。真ん中辺なんかどこかに吹っ飛んでいきました(手袋と防護眼鏡していてよかったぁ)。

 加工するのは(出来上がったらね)真鍮とかアルミとかアクリル等なので、固定チャックの取り付けはそんなに頑丈にしていなかったのです。しかし今やっているのはバリバリの鉄加工であることを思い知らされました(多分電気ドリルを 20Kgぐらいの力で押していたと思う)。
 
 そこでクランプを多用して「これでもかっ」というくらいガチガチに固定し直し、改めて3ミリで穴あけしました。深さは30ミリです。
 
 最後の穴広げです。六角シャフトの山々寸法を実測したのですが、今一ピッタリわかりません、角がチョッピリ丸まっていて個別に少し違うのです。しかしとりあえず 7.0ミリであけてみることにしました(結果オーライでした)。

 7ミリのキリサキの長さを考えずに全体をセットしたのでキリサキ先端がすこし軸受けに入ってしまいましたがかまわずやりました。ところで「ボール盤」とか旋盤の「芯押し台」のような機構が無く今回のように電気ドリルで鉄に30ミリもの深さの穴をあけるのは大変です。つい早くあけようとしてドリルに力を込めすぎ、キリサキの先端を焼いてしまう状態に陥りやすいです。潤滑油をふんだんに使い、ゆっくり少しずつあけていく必要があります。

 この7ミリの穴を30ミリあけるのに約5分ほどかかりました(ま、キリサキもあんまり切れる奴じゃ無かったし、研ぐのも面倒くさかったし買ってくるのもやだし)新品のキリサキを使えばもっと楽にあけられます。

 さて、最後の仕事「面取り」をします。私は罰当たりに大工用ノミでやっちゃいました。知人(旋盤工)は金ノコの刃をバキッと折った切り口でやるそうです。知人曰く「バキッと折った切り口は砥石で砥いた面より鋭い」とのことです。またこれをやらないのは「アマチュアだ」(面取りの事)と言っておりました(そうかいそうかい、私はたまに面倒くさくてやらないことがある、どうせオレはアマチュアさ)。
 
 めでたく穴あけ終わりました。この後10分ほど手が止まってしまいました。「上手くいかなかったらどうしよう、5日もHPで引っ張っちゃったし」チャックの六角部分を穴にあてがってははなし・あてがってははなし・・・、バンジージャンプってやったこと無いけどこんな気持ちかなぁ、清水のなんとかとも言うし
加工終了。
 
 しかし案ずるより何とやら、そのまま叩くと三ツ目部分が壊れますので短めの丸棒を軽くくわえさせブッ叩たたきました。そしてツマヨウジをくわえさせて「手作りトースカン」で変芯チェック、クルクル回してみましたら少なくとも目視ではブレはありませんでした、ばんざーーーい。


相対チャック・アタッチメント、完成
 
 工作ベース300がキン斗雲なら、このチャック付き主軸は如意金箍棒(略して如意棒)でしょうか、メカトロ工作には必須のアイテムになると私は思います(キントウンのキンの字が出てこない?)明日からこれの使い方をバンバンUPします。




 今回の工作って5日もかかりましたが旋盤でやればシャフトだけなら5分とかかりません、つくづく工作機械のありがたみがわかるってもんです。しかし電気ドリルとディスクサンダーだけで作った僕ってえらい?(自分で自分を誉めておく、だって誰も誉めてくれないし)。










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